今の時代は、終身雇用も少なくなり、ほとんどの人が1回や2回以上の転職をするのが普通です。しかし、就職しても1年も経たずに辞めては、転職を数えきれないほど繰り返す人もいます。なぜ転職がやたらと多いのか、転職癖のある人はどうすれば落ち着いて仕事をするようになるかを考察します。
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仕事を辞めようとする理由
転職癖のある人は、なんだかんだと不平不満を並べ、もっともらしい理由をつけて退職してしまいます。上っ面の言葉だけを聴くと一理あると感じられる面もありますが、本音の理由としては、以下の項目でほぼ当てはまります。
仕事に楽しさを感じられない
人は誰でも、楽しいと感じられないものを長く継続することはできません。それは仕事に限らず、自分からやり始めた趣味にせよ、親しい人からの頼まれごとであっても、共通しています。ですから、細かい部分では様々な理由があるにせよ、結局人は楽しくないことは、遅かれ早かれやめてしまうものです。
昭和の戦後世代は、生きること、生き抜くことがやっとの状況で、とにかく飯を食うためには仕事など選ぶ余地もなく必死で仕事に食らいついていくハングリー精神がありました。ですから、古い考え方からしたら、仕事に楽しい、楽しくないを求めるものではないという意見がほとんどでしょう。しかし、生活水準も上がり、根性よりは感受性が高まっている最近の世代とは仕事に対する意識が根本的に違います。今の時代は、基本的に『楽しい』と感じなければ続きませんし、辛いことが多かったり、厳しいだけしか感じない場合はいくら給料が良くても続かない人が多くなってきていると言えます。
仕事そのものが厳しいと感じる
前項と被りますが、仕事の内容が厳し過ぎると続きません。特に中小企業の多くは経営が厳しいところが多く、1人あたりの仕事負担が尋常ではないことがあります。いわゆるブラック企業と呼ばれる会社ですが、結局、収益がギリギリでまわしているので人件費削減、経費削減で利益を少しでも増やさないといけないのですが、社員が頑張れば頑張るほど、経営陣はそれでできるという判断をします。
それによって評価が上がり、給料が上がれば良いのですが、大抵は上がりません。これは経営がうまくいく見込みがなく、たいがいは経営が後手後手にまわっているためで、残業代を節約するために名ばかり管理職にされて、社員はより負担とさらなる責任を押し付けられる負の連鎖になりがちです、このように、経営そのものに問題があり、負担が大き過ぎる場合は、仕事を辞めざるを得ませんし、根性で頑張り過ぎると病気になるか、過労で倒れます。
人間関係がうまくかない
人間関係は、個人のコミュニケーション力によってだいぶ変わってきます。どんなに仕事ができる人であっても、会社組織で働く以上は、同僚、上司、部下とのコミュニケーションを円滑にできるスキルがないと、ストレスでやられてしまいます。コミュニケーション力の中には、ストレスマネジメント能力も含まれます。上司に厳しく叱られたという事実があっても、受け取り方は人それぞれです。
上司からできない奴だと思われたと感じて落ち込む人もいれば、その悔しさをバネに、見返してやろう!と発奮する人、今日は機嫌が悪いようだ、と気にしない人、俺に期待をかけてくれているから叱ってくれるんだ、と前向きに受け取る人。他人からの言葉の受け取り方しだいで人間関係は変わってきます。
また、挨拶をされても、相手に伝わるように返すことができなかったり、よく言われる報告、連絡、相談を怠る人や、上司の話や、お客さんの話を聴かない人なども必然的に問題が起こります。その起こした問題を素直に自己反省できずに、相手のせいにするようなタイプは、会社も冷遇しますし、本人も会社に対して不平不満が出て辞めることになります。
その仕事に自分の適正を感じられない
前項とは逆に、会社からは仕事能力を高く評価されていたとしても、自分自身がこの仕事や、会社に対して自分の適正を感じられない場合も、結局辞めることになります。これは、楽しみを感じられないことに近いのですが、人と接する仕事が好きな人が、ひたすらデータ管理するような仕事をさせられている場合や、現場職人のような人が、経理業務をやらされている場合、逆に内向的で数字を見るのが好きな人が、営業マンとしてお客さんと交渉するような仕事をさせられている場合なども、長く頑張ることはできません。
中小企業のサラリーマンは基本的に総合職として生きることを会社からは望まれますので、専門家としては適正があっても、オールマイティに立ち振る舞う器用さと柔軟性がない人は、なかなかサラリーマンとして成功することは難しい部分があります。
会社や仕事に完璧な待遇を求めるタイプ
会社勤めが続かず、転職を繰り返す人の特徴は、会社や仕事に対して理想が高すぎる傾向があります。簡単に言うと、自分が不満に感じる部分ばかり気になるタイプです。世の中に完全完璧な会社や、人間はいません。嫌なことばかりにフォーカスしていては、どの会社に入っても、必ず上記の理由を取ってつけては辞めて、他へ希望を求めて彷徨う就職難民になってしまうのです。これを他人から見ると、子供に見えたり、わがまま、こらえ性がない人に移ります。
こういう人を旦那さんに持つ奥さんはさぞ悩みと不安が耐えないでしょう。こういう人は、自分はかなり欠点があるにも関わらず、自己イメージやプライドばかり高く、会社や他人の欠点を許せないという人に対して完璧を求めるのです。また、新たに別の会社に入る際には、良い条件ばかりを鵜呑みにして入ってしまうのです。しかし、会社も中途採用する時は人手が足りなくて、仕事量が半端なく多かったり、厳しかったりします。また求人をかけてすぐ採用されるところは定着率が低く、劣悪な環境であることが多いのです。その現実を踏まえて、覚悟をして応募をした方が良いのですが、転職を繰り返す人は、なぜかそういったことを学習しないのです。
自分が職業に求める要素を1つ基準を決める
転職を繰り返す人は、まず自分の人生をどうしたいかを、はっきりさせることから始めてほしいのですが、いきなり人生について考えることは難しいでしょうから、先ずは、会社や仕事、職場環境に対して最低限、これさえクリアできていれば良い、これさえあれば辞めないという基準を決めてみて下さい。同時に、こうなったら辞める、という、どうしても我慢できないことを決めてみて下さい。
この基準を事前に設けることは、非常に大事です。転職を繰り返す人は事前準備や長期的な計画を立てることができません。ですから、決め事として、この2点だけ最初に決めるわけです。どんな会社でも嫌なこと、嫌な仕事はたくさん出てきます。しかし、その中でも、ここが良いから辞めないという基準を決めて、覚悟をして仕事をすると意外と簡単には辞めないものです。
たとえば、その基準を『給料が25万円以上』と決めたなら、その給料を、減額処分などで下回るようになったら辞める、と決めて、その他の人間関係や、残業が多いなどの理由では辞めないということに決めるのです。他には、パワハラばど『イジメがない職場』であったり、『営業職員の仕事ができる限りは続ける』でも良いですし、『細かいこと言われない』とか、『エアコンがある職場』でも何でも良いです。辞める基準から考えて、『企業犯罪や、嘘をついたり、お客さんを騙すような仕事をやらされたら辞める』というものでも良いです。『便所掃除させられたら辞める』でも良いですし、『残業代がカットされたら辞める』でも『休日が確保されなくなったら辞める』でも構いません。決めることが大事です。
自分が仕事を続ける基準と、辞める基準を決めておくことで、気分や、感情的、感覚的な動機で辞めるというケースの抑止力になるからです。既婚者であれば伴侶の方と相談して決めるのも良いです。最低でも20万円以上の給料と、週1回は必ず休日が取れる、という複数条件を立てても良いでしょう。実は条件の内容云々よりも、この条件を事前に考えるという作業が重要なのです。
起こり得るストレスを想定する
どこの職場でもありがちな状況を、下記にまとめてみました。想定する嫌なことの参考にしてみて下さい。
上司編
・怒る、怒鳴るなどのパワハラ系タイプ
・ねちっこく説教がくどいタイプ
・指示が不明瞭の割に、失敗を部下のせいにする
・指摘が細かい
・機嫌の波があり、こっちが気疲れする
・言うことがころころ変わって振舞わされる
・言い方や叱り方が意地悪い
・無視をしたり、何を考えているかわからない
・やたらとパシリに使おうとする
・仕事を押し付けて何もしない
・えこひいきをする
同僚編
・どうでも良いことを突っ込んでくる
・陰で悪口を言う
・やたらと対抗意識を燃やして足を引っ張ってくる
・何かあるとすぐ上司にちくる
・プライベートまで侵入してくる
・やたらと仕事を振ってきて自分はサボる
・先輩風をふかしてからかったり、バカにしてくる
・すぐキレる
部下編
・指示、言うことを聴かない
・やる気が感じられない無気力タイプ
・指示の上げ足を細かく取ってくる
・反抗的な態度でくる
・不遜でバカにしてくる
・指示しないことを勝手にやってひっかきまわす
・自分の部下に当たりがきつく新人を辞めさせてしまう
・職場の人間の悪口を言って空気を悪くする
・不正を行う
・見ていないところでサボる
・嘘の報告をする
・すぐ休む
待遇編
・休みがとれない、とりづらい雰囲気
・残業代がつかないのにサービス残業をやらされる
・残業代は出るものの残業時間が異様に多い
・タイムカード、給料を改ざんされる
・仕事量がどう考えても処理しきれない量を押し付けられる
・お客さんを騙すような仕事をさせられる
・給料の額が、なんだかんだ理由をつけられ、契約額よりも少ない
・基準を満たしているのに社会保険に入れない
・職場にエアコンがなく暑いまたは寒い
・ロッカーがない ロッカーに鍵がない
・更衣室がない 着替える場所がない
・休憩所がない
・休憩時間が取れない
・コンプライアンス違反がある
・教育システムがずさん
・給与明細書をもらえない
・会社が労働基準法違反をしている
・有給を使わせてもらえない(年次休暇を消化できない)
・制服、靴など至急されない
・交通費が支給されない
以上、入社後に気づく問題や、起こり得る不満などを挙げてみましたが、これはほんの一例で、事業内容や業務内容、職種によってもっと様々な問題があるでしょう。新しく入る会社はいくら調べても、入ってみないとわからない問題はいくらでもあります。逆に問題点が外からでは見えないからこそ、その会社に入ろうと思える部分もありますので、すべて事前に予想できれば良いというものでもありません。肝心なことは、会社というものは完璧ではないということです。
正社員としての心構え
ですから、入ってみたら「え!こんなはずでは」とか「こんな酷い会社とは思わなかった」ということはいくらでもあります。できるならば、自分で選択した会社でしょうし、少々の苦労や不満はあっても、これも社会勉強と経験だと前向きに取り組んでいくマインドを持つことが理想です。またもし、正社員として入社したのであれば、正社員も会社の一部であり、会社を作っている一人であるということを忘れてはいけません。
アルバイトやパートであれば、会社に対して不満があるので辞める、という選択をする基準も自己中心的な基準で良い部分もあります。それは、会社そのものをアルバイトやパートの権限では変えることが困難だからです。もちろん、人間力の高い人であれば、その影響力で会社に良い影響を与えて内部改革も不可能ではありません。しかし、転職を繰り返すタイプがいきなりそのような難易度の高い行動は取れないでしょう。
しかし、正社員として入社できたのであれば、会社を構成する一員になったということで、本人の力量次第である程度の改革は可能です。出世して経営に参画することだって、すぐには無理でも、長く働くことで可能性が出てくるわけですから。正社員である以上は、会社から「こうしてもらえない」「ああしてもらえない」という、『してもらいたい症候群』であってはいけません。会社の問題点は自分がこれから改善する!というくらいの気概を持つことが使命でもあります。
転職を繰り返す人の中には化ける人がいる場合もある
また転職を繰り返すタイプの中には、組織で働くことにそもそも向かないタイプが存在することも確かです。それは、常に自分のスキルを磨くことや、経験値を求めているタイプと、元々大きな野望を持っていて、会社勤めを1つの経験の踏み台と考えているタイプです。
転職経験が多い成功者として有名なのは、ケンタッキーフライドチキン創始者・カーネルサンダースです。彼は40種類にもおよぶ転職を経験しています。単なる転職だけではなく、事業経営でも倒産を経験しています。その他には、タモリさんもタレントになるまで3回転職を経験していますし、直木賞作家の志茂田景樹さんなどは20種類以上の転職を経験しています。俳優、タレント、作家など個人事業に向いている才能がある人は、組織の仕事が合わないのですが、本人がまだ自分の才能に自覚症状がなかったり、覚醒に必要な経験を踏んでいない場合などの若い時代には、どうしても転職を重ねることが多いです。また事業家なども、人に使われる仕事は生来向かない面と、自分の野望へ近づくための最善の道を常に模索しているようなところがあるので、1つの会社でずっと雇われるということはありません。
ですから、転職が多い、1つの会社にずっと勤めることができないタイプでも、わずかな割合で、後に成功するタイプはいる可能性はあるので、転職数が多い=問題児ということではありません。人と同じような人生を歩めないというタイプは、1つ化ければ、普通の人ができないような仕事の仕方で大成する可能性を秘めているとも言えるのです。
但し、まだ成功していないうちは、周囲からもいろいろ言われますし、迷惑をかけたり心配をかけたりもするでしょうから、自分の人生の価値観や、生き方が定まらないうちは、本記事を参考に、とりあえずは目の前の仕事を継続できるように頑張ってみましょう。きっとそのうち時期が来れば、おのずと自分の道がわかってきます。